pastorale_cover_20190531ol
著者C・F・ラミュ
訳者笠間直穂子
発行2019年06月26日
定価2100円(税抜き)
仕様四六判変形/並製/295頁
ISBN978-4-88588-097-1
amazonで購入する

パストラル ラミュ短篇選

はじめて出逢う世界のおはなし 1910−1946

ごろごろする石。乾いた土。ながれる川の、吹いてくる風の、音。土や緑の、山羊や牛の、マッチの、におい。 遠くないところで戦争があり、でもここには、べつの戦いがある。べつの剝きだしの生が、ある。(帯文/小沼純一)

  

「火でも焚いてみるか?」「あたし、何も持ってない。あんたは?」「あるとも」——山羊の番をする少女のもとに、どこからともなく現れた14歳の少年。風の強い丘の草地、赤い燐マッチで火を熾した二人は隣どうし寝そべり、小石なみにカチカチのチーズを炎でとろりとさせパンにぬって食べる……。夕暮れどきの情景が、香りと音をともない彩り豊かに立ち現れる(表題作「パストラル」)。規範的なフランス語と異なるスイス・ロマンドの地理に即した文学言語をもちい、恋、老い、農家のくらし、山の民話など、人間と、人間を取り巻く世界の根源的な姿を映し出す20作品。


【収録作品】
パストラル
農村の年寄り
湖の令嬢たち
日照り
使いの者
居酒屋の老人たち
香具師一家の休息
助けを求めて
野生の娘
山にひびく声
フォリー姿の物狂い
森での一幕
眠る娘

三つの谷
田園のあいさつ
漁師たち
ぶどう作り
恋する女の子と男の子
農家の召使い


【著者紹介】
シャルル・フェルディナン・ラミュ
スイス・ロマンド(スイスのフランス語圏)文学を代表する作家。1878年、ローザンヌに生まれる。ローザンヌ大学卒業後、パリに移り住み、スイスとフランスを行き来しつつ本格的な執筆活動を開始。1905年に初の長篇小説『アリーヌ』を刊行する。1914年、第一次世界大戦勃発直前に故国へ戻り、以後はローザンヌ近郊に居を定めて、規範的なフランス語と異なるスイス・ロマンドの地理に即した文学言語の創造を目指した。代表作に長篇小説『山の大いなる恐怖』『地上の美』など。1947年、ローザンヌ西郊ピュイイにて死去。


【訳者紹介】
笠間直穂子
フランス語文学研究、翻訳。国学院大学文学部准教授。1972年、宮崎県串間市に生まれる。上智大学外国語学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。ルーアン大学人文学部専門研究課程修了。著書に『文芸翻訳入門』(フィルムアート社、共著)、『文学とアダプテーション』(春風社、共著)など、翻訳にンディアイ『心ふさがれて』(インスクリプト、第十五回日仏翻訳文学賞)、フローベール「サランボー(抄)」(『フローベール』集英社文庫)など。