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著者ユーリ・ツェー
訳者酒寄進一
発行2023年11月6日
定価2700円(税抜き)
仕様四六判/並製/415頁
ISBN978-4-88588-112-1
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人間の彼方

わたしたちには人間である勇気があるか?

2020年春のロックダウン下のドイツを舞台に、自分とは異なる境遇の相容れない人間との一風変わった交流と友愛を、ウイットに富んだリズミカルな文体で描くウィズコロナ小説。

ベルリンの広告代理店でコピーライターとして働く36歳のドーラは、愛犬を連れて田舎の小さな村ブラッケンに逃げてきた。表向きはロックダウンした都会から人の少ない田舎に避難したようにみえるが、本当の理由は別にある。環境問題にのめりこむパートナーとの間にはしばらく前から隔たりができていて、コロナを機に過激の度合いを増す彼の態度に辟易したドーラは、彼と距離を置くことにしたのだ。のどかな田園生活を夢見ていたドーラだが、隣人のゴートはスキンヘッドのマッチョなネオナチで、もとは空き家だったドーラの家の鍵をまだ持っていて、勝手に出入りするなど、ひと筋縄ではいかない村人たちに振りまわされることになる。ゴートは無愛想ながらドーラにベッドを作ってくれたりといろいろ親切にしてくれるが、ドーラは心情的に受け入れることができない。しかしある事をきっかけにドーラの心は変わりはじめる。

ドイツ100万部超のベストセラー! ドイツ最大の人気作家のひとりユーリ・ツェーが描くウィズコロナ小説。

初の本格コロナ小説。2020年春のロックダウンの最中を描く。パンデミックが及ぼした影響を社会のレベルと個人のレベルで克明に描き切っている。
――「南ドイツ新聞」イェルク・マーゲナウ評

この小説を心の底からすべての人に薦める。さまざまな集団のあいだに存在する数々の壁を壊すために。
――ベルリン=ブランデンブルク放送、フランク・ディーチュライト評


【著者紹介】
1974年、ドイツのボンに生まれる。パッサウ大学とライプツィヒ大学で法学専攻。専門は国際法。ニューヨークやクラクフにも留学している。現在はブランデンブルク州ハーフェルラントの村で暮らしている。法学博士で、2018年にブランデンブルク州憲法裁判所名誉裁判官に就任している。デビュー作『鷲と天使』(2001年)で作家活動をはじめ、これまで書いた小説は35ヵ国語に翻訳され、ヘルダーリン奨励賞(2003年)、エルンスト・トラー賞(2003年)、トーマス・マン賞(2013年)、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン賞(2015年)、ケルン市ハインリヒ・ベル賞(2019年)など多くの文学賞を受賞し、2018年にはドイツ連邦共和国功労勲章を受け、本書も2021年にバイエルン書籍賞のバイエルン放送2視聴者賞に輝いている。代表作には本書の他、ブランデンブルク州の架空の村を舞台にした社会小説『ウンターロイテン』(2016年)があり、邦訳には『シルフ警視と宇宙の謎』(早川書房)がある。

【訳者紹介】
1958年生まれ。ドイツ文学翻訳家、和光大学教授。シーラッハ『犯罪』で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第一位を受賞。主な訳書にシーラッハ『刑罰』、ゼーターラー『キオスク』、ケストナー『終戦日記一九四五』、ヘッセ『デーミアン』、カシュニッツ『その昔、N市では』などがある。

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