口のなかの小鳥たち
はじめて出逢う世界のおはなし―アルゼンチン編
本棚から本を取り出して読むというより、ギャラリーを歩くかインディペンデント映画を見るようなつもりで読め——マリオ・ベジャティン
ボルヘス、ビオイ=カサーレス、コルタサル等の
ラプラタ幻想系譜の最先端!
スペイン語圏における
新世代幻想文学の旗手による傑作短篇集
「おまえは小鳥を食うのか、サラ」と私は言った。
「そうなの、パパ」
娘は恥ずかしそうに唇を嚙んで言った。
「パパもでしょ」
「おまえは生きた小鳥を食うのか、サラ」
「そうなの、パパ」——本文より
几帳面で整頓好きな普通の男の暮らしに突然入ってきたシルビア、そして小鳥を食べる娘サラ……。父娘2人の生活に戸惑う父親の行動心理を写しだした表題作「口のなかの小鳥たち」など、日常空間に見え隠れする幻想と現実を、硬質で簡素な文体で描く15篇。
【収録作品】
イルマン
蝶
保存期間
穴堀り男
サンタがうちで寝ている
口のなかの小鳥たち
最後の一周
人魚男
疫病のごとく
ものごとの尺度
弟のバルテル
地の底
アスファルトに頭を叩きつけろ
スピードを失って
草原地帯
【著者紹介】
サマンタ・シュウェブリン
1978年、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。ブエノスアイレス大学で現代芸術論を学びつつ文学活動を開始、これまでに『騒ぎの核心』(2002年)と本書『口のなかの小鳥たち』(2009年)の2冊の短篇集を刊行、スペイン語圏における新世代幻想文学の旗手とされる。本書は英・独・仏・伊、数か国語にも翻訳され、好評を博した。
【訳者紹介】
松本健二
1968年、大阪生まれ。大阪大学言語文化研究科准教授。二十世紀ラテンアメリカ文学における前衛表象を研究。訳書にロベルト・ボラーニョ『通話』(白水社)など。