魔法にかかった男
ブッツァーティ短篇集 Ⅰ
現代イタリア文学の奇才ブッツァーティ待望の未邦訳短篇集
初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳!
誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。
【収録作品】
チェーヴェレ
騎士勲章受勲者インブリアーニ氏の犯罪
変わってしまった弟
新しい警察署長
剣闘士
家の中の蛆虫
リゴレット
エレブス自動車整備工場
個人的な付き添い
巨きくなるハリネズミ
魔法にかかった男
機械
ヴァチカンの烏
新しい奇妙な友人たち
あるペットの恐るべき復讐
大蛇
偶像崇拝裁判
勝利
聖アントニウスの誘惑
屋根裏部屋
【著者紹介】
ディーノ・ブッツァーティ
1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長編『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短編集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。
【訳者紹介】
長野徹
1962年、山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家。児童文学、幻想文学、民話などに関心を寄せる。訳書に、ストラパローラ『愉しき夜』、ブッツァーティ『古森の秘密』『絵物語』、ピウミーニ『逃げてゆく水平線』、ピッツォルノ『ポリッセーナの冒険』、ソリナス・ドンギ『ジュリエッタ荘の幽霊』など。