逃げてゆく水平線
はじめて出逢う世界のおはなし―イタリア編
イタリアから届いた25篇のファンタジーア!
沈黙を競う人びと。ボクシングに飽きたゴング。
水平線に体当たりする船……
本書はありとあり得ない果実がひしめく
蜃楼のバザールである。
読者はそこに不条理の絶対を見い出すに違いない。
(舟崎克彦氏による推薦文より)
「どうか私に賭けをする機会をお与えください。もし私が、パスタの調理よりも短い時間で、一の膳でも二の膳でもなく、肉料理でもなければ魚料理でもなく、海と大地の色と、戦争と平和の色で彩られ、地獄のように熱く、天国のように馥郁たる香りを放ち、この世界のように丸く、どんな侮辱よりも忘れ難い料理を作ることに成功しましたら、そして、味にうるさい百人の宮廷貴族の方々が他のどんな食べ物よりも美味しいとお認めになりましたなら、どうか私に自由をお与えください。もし、その料理がお気に召されなければ、私の首をはねてください」(「囚われの料理人」より)
シンプルなストーリーに隠された意図と背景には、人間っぽさと社会風刺が、ユーモアたっぷりの皮肉とともに、イタリアならではの情景で描かれている。
【収録作品】
建物の中に入っていった若者
ナバラの決闘
沈黙大会
囚われの料理人
メガネをかけた足
悲しい男のマフラー
登るクマ
税関吏の物語
パトリシュスと悪魔ラクソー
ゴングの音色
数の勉強
ジュッファの馬
トルボレーズ包囲戦
感謝日
コンパリコの扇子
闘牛士になった信号機
壺作りのボルト
トウモロコシの中の老人
帽子と頭
フランソワ・マジックのフレスコ画
五人とリンゴ
栄誉のサクランボ
美しき騎士の仮面
盗まれた車輪
逃げてゆく水平線
【著者紹介】
ロベルト・ピウミーニ
1947年、北イタリアの小邑エードロ(ブレッシャ県)に生まれる。教師、俳優などの職業を経て、78年に作家としてデビュー。子ども向けの小説、童話、詩、戯曲など著書は数多い。現代イタリアを代表する児童文学者の一人。
【訳者紹介】
長野徹
1962年、山口県に生まれる。東京大学文学部卒業、同大学院修了。イタリア文学研究者・翻訳家。ピウミーニ『光草』、ピッツォルノ『ポリッセーナの冒険』、ソリナス・ドンギ『ジュリエッタ荘の幽霊』他、イタリアの児童書を中心に訳書多数。