動物奇譚集
ブッツァーティ没後50年、追悼出版第一弾――幻想文学の巨匠が残した魅惑の動物譚
ブッツァーティの動物譚が開く地平、
それは人間中心主義の解体、
人間本位の物の観方の脱中心化である。
――「訳者あとがき」より
ソ連の畜産学研究所で行われた戦慄の実験を語る「アスカニア・ノヴァの実験」、一匹のネズミに手玉に取られる企業をコミカルに描く「恐るべきルチエッタ」、釣り上げられた奇妙な魚をめぐる怪談「海の魔女」、飼い主とペットの立場が入れ替わったあべこべの世界を舞台に、動物であることの体感をユーモラスに語る「警官の夢」、自然界の逆襲をアイロニカルに表現した「蠅」など、デビュー当時から最晩年に至るまでに書かれた〈動物〉が登場する物語を集め、ブッツァーティの作品世界の重要な側面に光をあてたアンソロジー。
【著者紹介】
1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、短篇集『七人の使者』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として『シチリアを征服したクマ王国の物語』などがある。1972年、ミラノで亡くなる。
【訳者紹介】
1962年、山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家。児童文学、幻想文学、民話などに関心を寄せる。訳書に、ストラパローラ『愉しき夜』、ブッツァーティ『古森の秘密』『絵物語』、ピウミーニ『逃げてゆく水平線』『ケンタウロスのポロス』、ピッツォルノ『ポリッセーナの冒険』、ソリナス・ドンギ『ジュリエッタ荘の幽霊』、グエッラ『紙の心』など。