新刊情報(2022年8月)
ドイツ最大級のバンド、ラムシュタインのキーボード奏者、フラーケ自身が書いたエキセントリックなバンド回想録、『きょうは世界の誕生日』(小林和貴子訳)を刊行いたします。
要するに、俺たちのバンド史のはじめには、ひじょうにスリリングなコンサートの時代があった。西ドイツではいまだに外国旅行をしている気分だった。人々が快く受け入れてくれなかったわけじゃなかったが、俺たちはまだ無名だったから、ほとんど誰も来なかった。ハンブルクのクラブ・ロゴで演奏したとき、数えられる観客は八人だった。まさにその八人を、俺たちは味方につけようとした。それがまた面白かった。ドイツで最初の成功を手にしたあとで、ひょっとしたら俺たちは、だから喜んで外国に赴いた。ひたすらまた見知らぬ人々の前で演奏するために。
――本文より