アズィズ・マイオ事件
ブッツァーティ短篇集Ⅳ
未邦訳短篇アンソロジー、第二期シリーズ開始!
日常の世界から離れて戦地に向かう者が車窓に感じる寂寥感と、宇宙の彼方から人間の営みと運命を静かに見守り続ける星への想いを瞑想的に語る「夜が訪れる度に」、カラスのくちばしのような形をした長いつばのある奇妙な帽子をかぶった謎の使者が届ける通知がもたらす不可解な事象「アズィズ・マイオ事件」、山での孤独や絶対的な静寂を、現実と幻想を融合して描く「フィラデルフィアの冬の夜」、運命的な出来事の到来の希求と、それを無にしてしまう時の流れをテーマにした「とぎれた物語」など、全21篇を収録。
一見すると現実離れしているように思える奇想天外な物語であっても、その背後には人間ブッツァーティが存在し、彼の人生からくみ上げられたリアルな感覚や世界観と深いところでつながっているということである。それゆえ、その作品は奇想を弄ぶ知的な遊戯に堕することがない。その意味において、ブッツァーティは誠実な作家なのである。――「訳者あとがき」より
【収録作品】
南の影
軍隊の優雅さ
川辺の雷雨
提案書
老いたイボイノシシ
夜が訪れる度に
よき娘たち
とぎれた物語
地上に降りた神
不穏な会食
山は禁じられた
黒い男
夜
無益な誘い
忘れてしまった
栄枯盛衰
暗闇
治りたかった男
嫉妬深い音楽家
アズィズ・マイオ事件
フィラデルフィアの冬の夜
【著者紹介】
ディーノ・ブッツァーティ
1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短篇集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『絵物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。
【訳者紹介】
長野徹
1962年、山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家。児童文学、幻想文学、民話などに関心を寄せる。訳書に、ストラパローラ『愉しき夜』、ブッツァーティ『動物奇譚集』(須賀敦子翻訳賞受賞)、ピウミーニ『ケンタウロスのポロス』、ピッツォルノ『ポリッセーナの冒険』、ヅィリオット『トロリーナとペルラ』など。